「ママの家がプールになったよ。」
Netflix映画『大洪水』は、息子自仁の一言で大洪水というアポカリプスが始まります。
最近T-ARAのハム・ウンジョンと結婚した映画『全知読者視点』の監督で、フィルモグラフィーの前作が期待作だったのにそれに及ばず残念がらせたキム・ビョンフ監督の作品です。
しかし今回は本当に独特なスタイルでタイムワープ物を表現した「記憶ワープ物」という面白い設定にキム・ダミ – パク・ヘスコンビの熱演が加わり、様々な解釈を生んでいます。
無限繰り返される状況を変えようとしたタイムワープ物、トム・クルーズ映画『エッジ・オブ・トゥモロー』を覚えている方がいれば、同じプロットの記憶ワープ物です。
時間を戻す設定のタイムワープ物ではなく、記憶を共有する人工知能という設定に変えた、知れば傑作、知らなければ駄作になり得る好悪が分かれる映画です。
映画はママ・ク・アンナの記憶を共有する実験体と息子自仁の記憶を共有する実験体のマトリックス世界の物語から始まります。
大洪水というアポカリプス終末を前に、新しい人類を作るイザベラ・アプリプロジェクトを開始します。
つまり映画で示される自仁とアンナは最初からイザベラというマトリックス世界に存在する記憶ワープ物実験体たちで、息子自仁を探さなければならないママとしてのミッションが与えられます。
そして最後の結末、実験体はママの心を持つようになり、新人類の誕生を告げて終わります。
つまり映画の中で本物のク・アンナは宇宙で死ぬシーンが一度きりで、それ以外は全てマトリックス内の実験体に過ぎません。
この点を理解すれば、久しぶりに本当に新しいスタイルの映画に出会ったと思うNetflix『大洪水』映画です。
あらすじから結末解釈までゆっくりお話ししましょう。
(ストレスキャラとして登場する息子は実は知れば実験体アンナを覚醒させる最高のヘルパーです。まだ映画を見ていない方はアンナのTシャツに刻まれた番号を見れば数字がずっと変わります。知ればすべてのシーンが天才的な設定ですが、これに気づく人がどれだけいるか…)

Table of Contents
映画『大洪水』出演陣&登場人物
本物のク・アンナ(キム・ダミ)(英語吹き替え:フランチェスカ・カルロ/日本語吹き替え:松本サラ)
UN傘下非公式研究機関ダーウィンセンター・エモーションエンジン開発3チーム責任研究員でありアパート303号室住人、宇宙で事故死。
ク・アンナ実験体(キム・ダミ1人2役):巨大な津波の中で生き残るために奮闘する映画の主人公
ソン・ヒジョ(パク・ヘス)(英語吹き替え:スティーブン・プ/日本語吹き替え:中川圭一)
地球全体を脅かす大洪水の中でク・アンナを救助しようとする人力保安1チームであり、幼い頃ママに捨てられたトラウマで人間に否定的な視点を抱く設定の実験体
シン・ジャイン(クォン・ウンソン)(英語吹き替え:デイモン・フォン/日本語吹き替え:熊谷美玲)
映画で登場するジャインはエモーションエンジンで作られた実験体で実験体名ニューマン-77。
本物の息子シン・ジャイン:映画では回想シーンでのみ登場
その他大洪水映画登場人物
- イ・ジス(ユナ)(英語吹き替え:エリン・チョイ)
- 実家ママ(パク・ミヒョン)
- 不良1(キム・ドンヨン)
- 不良2(カン・ビン)
- 1503号妊婦妻(ウンス)
- 1503号夫(アン・ヒョノ)
- 保安チーム長(イ・ジュンヒョク)
- 304号息子、娘(チョン・ミンジュン、キム・ギュナ)
- イム・ヒョンモ(チョン・ヘジン[特別出演])(英語吹き替え:ジョリン・キム)
ク・アンナ責任の上司であり首席。 - イ・ヒソ(パク・ビョンウン[特別出演])(英語吹き替え:コリー・イ)
イザベラ・ラボ所長。 - シン・ガウォン(イ・ハクジュ[特別出演])
Netflix映画『大洪水』あらすじ
映画は突然大洪水というアポカリプスを経験した本物のク・アンナ(キム・ダミ)の記憶を持つ実験体アンナから始まります。
ある日突然土砂降りの雨が降り注ぎ巨大な津波が迫るマトリックス世界の「ク・アンナ」の姿から始まります。
(※映画を詳しく見れば完成した実験体の息子は何をすべきか知っていますが実験体アンナは慌てふためきます。)
アンナ(実験体)は人工知能開発研究員で息子「シン・ジャイン(やはり実験体クォン・ウンソン)」と二人きりで3階に住んでいます。
「ママ、家がプールになったよ。」
息子の声で目を覚ましたら大洪水が迫ってきており、すでに二人が住む3階まで水が上がっています。
慌てふためいて荷物をまとめようとするが、ヒジョ(パク・ヘス)からすぐ出ろという電話がかかり、すぐに家から避難します。
アンナと息子ジャインは数年前車が水に落ちる事故でパパを失った辛い記憶があります。
そのため実験体のジャインは幼い頃から普段スイミングスクールに通ったりゴーグルをいつも持ち歩くなど奇妙な行動をします。
屋上へ皆で避難しようとする住人たちのおかげで階段は大混乱ですが、アンナを探しに来た「ソン・ヒジョ(パク・ヘス)」が登場します。
アンナ一人を救うために急派された人力保安チームのヒジョは、災害状況にもかかわらず一人勇敢にアパートに到着したのです。
(※登場人物たちを襲う水の色が非常にきれいという設定は実は穴ですが、本物のアンナの記憶世界なので不可能ではないですがちょっと…)
実験体の息子ジャインは低血糖を患っており、アンナは無意識に薬を詰めましたが水で失くします。
九死に一生を得ますが、今度は低血糖ショックで息子が倒れると、あるおじいちゃんの家に無断侵入しジュースに砂糖を混ぜてかろうじて救います。
屋上に上がる直前突然急なうんちがしたくなるジャインにアンナは苛立つばかりですが…
(※実はこの部分も5歳の知能と脱出失敗という記憶を持つジャインを止める唯一の方法です。)
脱出しようとする中、おじいちゃんを探す孫「イ・ジス(ユナ)」や出産間近の妊婦などに出会いますが、急いでいるアンナは素通りします。
ようやく屋上に脱出ヘリが来る時間に合わせて到着しましたが、息子ジャインの頭の中にあるエモーションエンジンを抜き取る作業をします。
プロジェクト自体を考案したアンナは無力に他の工作員たちが息子を殺すのを眺め、彼女を救いに来たヒジョも絶望的にその場で銃殺されます。
実はアンナはママの心を持つために息子ジャインを探さなければならないミッション中の実験体で、見つけられず宇宙へ向かいます。
主人公はタイミングよく宇宙に浮かぶ仮設研究所へ行く宇宙船に乗りますが、先に飛び立った宇宙船が落ちる隕石に当たり爆発し、記憶が最初に戻ってワープします。

『エッジ・オブ・トゥモロー』のように繰り返される失敗の中で少しずつママとしての心を悟っていく実験体は、前の失敗から学んだことを実践します。
低血糖薬を詰める、砂糖たっぷりのオレンジジュースなど…
しかしやはりジャインがまた消えて…
同じ状況が全く同じに繰り返されることを知るアンナは途中で出会ったおじいちゃんを探すジスを救うのにも成功します。

そしてジスの助けで不良どもを懲らしめるのにも成功します。
しかしジャインを探す道が見つからないアンナは突然息子が描いた絵を思い出し、携帯の中を開いて絵を確認します。
実験が繰り返されていることを悟るアンナ
アンナは数千回描かれた息子の絵を見てようやく自分の記憶を少しずつ取り戻し、救助隊員に強制的に連れていかれる直前にヒジョに真実を伝えます。
「おじさんヘリ乗っちゃダメ、屋上で死ぬよ。」
アンナの言葉を聞いたヒジョは自分が本当にすべきことはアンナを屋上に連れていくことではなく救うことだと悟り、工作員たちと格闘します。
しかし多勢に無勢で危機に陥るとアンナがかろうじて銃を撃って救います。
映画『大洪水』結末
今や覚醒したアンナとヒジョはチームになってジャインを探しに出ます。
「何千回も消えたならママが自分を探してくれるのを待ってるんです。」
しかしすでに周りは工作員でいっぱいで、ヒジョが工作員を阻止する間にアンナがジャインを探してクローゼットに向かいますが、すぐ前で阻止されます。
不幸か幸かその瞬間津波がアパートを襲い皆水に沈み混乱の中工作員を制圧して脱出成功します。
21499回目の実験で屋上クローゼットに入って寝ていた息子ジャインを見つけ成功しますが…
「違うよ捨てたんじゃない。ママが待ってろって言ったじゃん。」
砂糖ジュースを飲ませて実験内の息子を起こしたアンナは本物のアンナの母性愛を悟り、自分を捕まえに来た工作員を制圧し、次に会う約束をし、水面に浮かぶところまで泳いで行けと自分を犠牲にします。
「これでいい」と思った人工知能は止まったプログラムを再起動し、息子のために海になった世界に飛び込んだママを眺めます。
実は最初地球を脱出しようとしたアンナは宇宙船で死にゆく中、自分の記憶と息子の記憶を自分が研究していたエモーションエンジン実験に使えるよう依頼していました…
人間の感情が完成形に進化したのを確認した人工知能は合成人間を創造し、宇宙から安定化した地球へ射出して映画『大洪水』は結末を迎えます。
Netflix『大洪水』クッキー
大洪水クッキー映像は一つあり、安定化した地球へ送られる複数の小さな宇宙船モジュールを映してクッキー映像が終わります。
Netflix『大洪水』結末解釈
映画の最後は実験体アンナが本物の人間としての母性愛を悟れるかで、本物の母性愛は自分を犠牲にする心(エモーション)だったことを知らせて終わります。そして人類終末の大洪水まで5年の時間しかなく、息子ジャインを先にエモーションエンジンにしたことを知らせます。そしてマトリックスプログラムを抜け出し、再び大洪水世界の中に戻って実験体アンナが息子ジャインを探して終わります。
「ジャイン、ママとダイブする?30まで数えるよ」

見ててもわからなかったNetflix『大洪水』解釈
映画で示されるすべてはマトリックス世界のアンナで、本当のミッションは息子ジャインを救出することでもジャインを探すことでもなく、マトリックスプログラムを抜け出して本物のママの心を悟ることです。だから映画内のすべてのジャインは結末をすでに知っていたので5歳児なりにママを諫めました。
おかげでストレスキャラ設定で最初から消えたり急にうんちしたり怒りを誘いますが、実はこれすべて人工知能AI内のアンナが脱出しようとしないものです。21499回の实验の終わりにようやくママがすべきことはジャインを救うことではなくマトリックスを抜け出して映画の最後シーンようにジャインを探して本物の母性愛を悟ることです。
つまり映画で起きるすべての状況はアンナには不親切な試練の連続でしかありません。そして最後の結末を通じて母性愛はマトリックス世界を抜け出す即「エラー領域」であることを示します。つまり5歳ジャインの記憶を通じて本物のママアンナのすべての記憶を目覚めさせて終わります。
映画『大洪水』解釈が簡単でない理由
映画内ではアンナの記憶がずっと繰り返されるタイムループ形式ということを知らせますが、見る人々は大混乱を起こします。突然ジャインが消えたり、突然ジスが現れたり、低血糖で倒れたり、妊婦が見えたり…一体なぜ?
(※すべてが実験体を目覚めさせる装置で保安が悪役ならジャインがママを目覚めさせる最大のヘルパーというのが逆転中の逆転です。)
しかし知れば映画は最初から現実ではなく、ジャインの記憶とアンナの記憶を基に進む母性愛探しミッション中のワープ物です。だから災害映画と勘違いした人々はこれが偽物とは知らず苛立つしかありません。中盤でようやくワープ物だと気づきますがこれも罠で本当は別のところにあります。

そしてこれを映画終わり数秒前でようやく示唆する歴代最も不親切にまとめられた映画です。つまり映画内で本物のアンナは死ぬシーンだけ登場します。5年でママを作るために結局本物の人間息子ジャインの記憶を通じて悟るのが映画の核心です。
耳元で囁くシーンは本物のママとも見えますが最初の実験体の記憶と見るのが妥当だと思います。なぜなら最初に母性愛は息子を置いて去らないものだとチョン・ヘジンが逃げたというところで示唆しましたが、自分の息子を置いて去るはずがないからです。
つまり繰り返されるアンナの記憶のようにジャインの記憶も21499回繰り返され更新され、その中にクローゼット内でまた会おうというのがあったのがより妥当だと思います。だから映画が始まるとすぐママが去ろうとするのを見てクローゼットに隠れますが、慣れたようにアンナが一度で探し当てます。しかしジャインの記憶はクローゼット内でママを待つもので、消えたのではなくクローゼット内に再び入っていたのです。
「昨日も、その昨日もなんでずっとやらなきゃいけないの?」 – 実験が繰り返されるジャインの名台詞
そのため詳しく見なければわかりませんが、少し注意深く見ればアンナのTシャツ番号が491、1931などずっと変わります。つまり最初に示したアンナは白いTを着た最初の实验で、その後実験が繰り返されるたびに数字が上がり21499回目にようやくマトリックスを脱出します。
アンナとジャインは本物の母子関係か?
エモーション・プロジェクトは5年前から始まり、それをために本物の人間の子供から始めます。しかし映画内では実験室を示しながら登場するパパの第一声が知らない子のように「君がジャインか」です。つまりジャインは精子 – 卵子の共有で作られた子でした。
だからいくつかのプロジェクトが始まり、イム・ヒョンモ(チョン・ヘジン)も同じく子を育てましたが子を置いて去れず一緒に消えたのです。しかし本物のアンナは人類存続という実験の完成のために宇宙へ去る選択をしますが事故で死ぬ直前息子ジャインにまた会いたいと思い実験体に自ら志願したのです。
7993回目の実験で出産に成功した妊婦
本物のジャインはどうなったか?
データを回収するシーンで死んだように示唆されています。その後パク・ビョンウンがイザベラ・ラボのミッションを説明する過程で子探しミッションを設定するシーンと共に491回目を告げて始まるので、それさえもミッションの可能性が高いです。このシーンを逃した方はこの映画自体が本物のアンナの現実だと勘違いして見るかもしれませんが実はすべて実験でした。
映画の設定が完璧な5歳の子ジャインと違い、映画内のすべての実験体アンナは最初から一部記憶しか共有せず繰り返される実験の中で母性愛を探すミッションが与えられます。結末部分を注意深く見れば連れて逃げる時は頭が剃られていますがマトリックスを抜け出して会ったジャインはまた長い髪になっています。これは息子を置いてアンナは去れないことを知らせる装置に見えます。
(※母性愛を描いた映画とは違い本物のアンナはジャインを置いて冷徹に去りましたが死ぬ直前に悟ったのか自分を実験体に設定します。)
大洪水撮影地場所まとめ
- 盆唐メモリアルパーク
- 松地湖ビーチ
- 野魯別赤十字生態公園
- ETRIアイナム幼稚園
- (株)RFセミ
- 大洪水アパート撮影場所:水西江변17団地アパート&道龍SKビューアパート
映画『大洪水』レビュー
Netflix『大洪水』後記一行評
「観客が気づかないように映画を作るキム・ビョンフ監督の独特な才能が際立った」
知って演出を最初から実験状況にしたら気づかなかった人々が残念がります。詳しく見てもわからないTシャツの数字でワープ物ということを知らせ、実験というのは事故で死ぬシーン一度だけ知らせます。そのためどこまでが現実で偽物か混乱した方は皆厳評をする映画です。結局映画内のすべての災害状況はマトリックス内の偽物です。
最初から実験だった事実を隠して観客に混乱を与え、単純ワープ物のよう偽装した映画です。AI時代を批判した映画でAI実験を素材にワープ物を作った最近見ない面白い映画でした。人間性を強調した映画ですが宇宙船で死ぬ本物のアンナに人間性がなかったのも逆転なら逆転の映画です。厳評する方も理解できるほど難解です。
このほど一般観客が気づかなかったのは演出家として悩みが必要そうです。個人的には『全知読者視点』映画ももう一度見ようかと思うほど複雑な設定が魅力的でした。久しぶりに見る価値ある映画でなぜNetflixがキム・ビョンフ監督に投資したか分かった映画です。でもこれをTシャツ数字まで観察しながらワープ物を見る人がどれだけいるか…
大洪水 Netflix
- 英語: The Great Flood / 日本語 대홍수 영화
- 公開日: 2025年12月19日 (Netflixオリジナル全世界同時公開)
- 上映時間: 109分 (1時間49分)
- 上映等級: 15歳以上観覧可 (TV-MA)
- 監督/脚本: キム・ビョンフ
- 脚本共同: ハン・ジス
- 製作社: (株)幻想の光 (Fantasy Light)
- 配給/ストリーミング: Netflix
- 撮影期間: 2022年7月1日 ~ 2023年1月5日
- ワールドプレミア: 2025年9月18日 (第30回釜山国際映画祭 ‘韓国映画の今日 – スペシャルプレミア’セクション)
- ジャンル 災害, SF, アクション, ドラマ, スリラー, アドベンチャー, ディストピア, エコアポカリプス, タイムループ
- 主要出演陣 キム・ダミ, パク・ヘス, チョン・ヘジン等
- プロデューサー: キム・ギョンミン
- 撮影: キム・テス / 照明: シン・ギョンマン
- 美術: キム・ビョンファン, チェ・スルギ / 武術: チョン・ユンホン, ノ・ギョンスプ
- 衣装: チェ・ウィヨン / 編集: パク・ミョンソン, キム・チャンジュ
- 音楽: イ・ジュノ / サウンド: チェ・テヨン
- 特殊効果: M83




